フランス風を日本っぽく変換すると
「生姜焼き」が「ポーク・ジンジャー」になるのであれば、新橋がポン・ヌフでもよいのかなと。フランス語で「新しい橋」です。
この写真にちなんで、こちらを紹介したい。
「つむじ風食堂の夜」吉田篤弘(ちくま文庫)
今回、#文庫の会で「夜」というテーマで各自がセレクトした文庫本1冊を交換するイベントで、唯一2人がセレクトした1冊が幸運にも自分のところへやってきたのです!
ふたりのお仲間さんが選ばれたということで、とても興味があった本。
名もない食堂に集う大人たちの日常をほわりほわりと綴る。果物屋の柔らかい光に照らされたオレンジの描写が印象的で、今でも余韻が残っている。
『つむじ風食堂の夜』吉田篤弘 ちくま文庫。#文庫の会(仮)交換会 pic.twitter.com/KjcReFjxKZ— おれんじ (@SCrayons) 2017年11月1日
不思議で優しくて、癒される作品でした。
なんてことない日常を描いているのですが、読んでいて心地よかったです。
つむじ風食堂に私も行ってみたい。
私の手元にきてくれてありがとう、という気持ちでいっぱいです。#文庫の会(仮)交換会— 帆月 (@hozuki_1173s) 2017年10月31日
映画はこれ!
クラフト・エヴィング商會は、本好きにとっては気になる存在で、その装幀のお仕事をされている吉田篤弘氏が著者です。氏の小説は初めて。調べてみると、こちらの作品は映画化もされていルようです。
映画のキャッチーでしすが、とてもぴったりな表現かなと。個人的には、スネオヘアーの存在がいろんな意味でスパイスっぽいと思ったり。
読んでいるときは、もうちと(自分より)したの世代をイメージしていたけど、映画の予告宣伝見てみると… わりと今の自分の年齢(40代)でも共感できそうな話が多かったかもです。
「遅れてきた大人の為のファンタジー」
冒頭に近いここから、一気にイメージはファンタジアな感じへ。
あるじの心意気は、若いときに修行をした「パリの裏町のビストロ」の再現で、なるほど確かに、パリ帰りの心意気が、そこいらの安食堂と一線を画するものにしてはいた。
そして、普通に目にする細かいことごとにファンタスティックな物語を見出します。
「いやいやいやいや、よく見てご覧なさいな。傷ですよ。この傷の付き方。よおく似ていますでしょう?不思議ですなぁ。極端に言えば、こちらの机は西の果てにあって、こちらの机は東の果てにあった。あちらとこちらでそれぞれの時間をくぐってきて、それでわたしのところでこうして、ようやく出会ったわけです」
一方、振り返る過去ができた年齢を実感させる一文が
(略)どうでもいいことを巡って頭が回転してしまうのだ。あるていど歳をとってしまったことによる最大のロスはこの一点に尽きる。
そして
「何かを引き継ぐというのは本当に難しいことで……いまごろになって、ようやくそれが分かってきました」
スネオヘアーの役のセリフ(映画で実際に述べているかは不明)です。
40代って、だんだんやり直しがきかぬ人生に入り、過去を振り返りつつ来たる老後を思い、困難を実感しつつ、それでいて改めて挑戦しようと思ったり… 子供がいる人・いない人で感じることの違いもあるかもですが、自分の人生に妥協しつつも楽しみたいな!と励まされるような1冊でした。