80年代に物心ついた自分にとって、「柳家小さん」と聞けば永谷園のCMに出ていた着物着ているお爺ちゃんのイメージが強い。ライブでその落語を楽しめなかったのが残念だ。孫には小林十市(バレーダンサー)や柳家花緑(同じく落語家)がいらっしゃるが、おじいちゃんのイメージよりカッコいい系かも。
自分、ぼんやりと落語の話に身を委ねるのが心地良い年頃になって、こういう話を文字で読めるのがまた良い。掌編小説を読んでいる感覚だけど、これを話芸としても話者の手ぶり身振りも交えて(早く)寄席で楽しみたい。
この本はこういう本
タイトル | 小さん落語集(上)(中)(下) |
監修 | 興津要 |
出版社 | 旺文社文庫 |
内容はこういう感じ
小さん落語集(上)
- 道具屋
- 青菜
- あくび指南
- 笠碁
- たぬき
- ふだんの袴
- 長屋の花見
- 長者番付
- 不動坊
- 粗忽長屋
- 富久
- ろくろ首
- 祝いがめ
- 子別れ
「笠碁」と「子別れ」が好きになった。
ここでネタをバラしても仕方がないけど、前者は爺さまたちの男の友情を、後者は夫婦の別れと再出発はコッテリ&サッパリ演じる話を聴きたい&見たいと感じた。どちらも、ぼんやり既読感のような感覚があったけど、今後はオチを知っていながら、演者の芸を楽しめそうな自分好みの話だった。
小さん落語集(中)
- 出来心
- 湯屋番
- 親子酒
- 真二つ(ご利益) 山田洋次 作
- 高砂や
- 時そば
- 大工調べ
- 言訳座頭
- 三人旅
- 芋俵
- 猫久
- 粗忽の使者
- 宿屋の富
- らくだ
有名どころで「時そば」「大工調べ」「らくだ」などがあり、上巻ほど思い入れを感じた作品はなかったけど、どれも小さんの話を聴きたくなるラインナップだった。山田洋次監督の作品というのもよく、ネタ元が英国人ブラックユーモア作家のR・ダールというのがまたよかった。やっぱりR・ダールって好きな人は好きなんだなと(自分も好き)。
小さん落語集(下)
- かぼちゃ屋
- 饅頭こわい
- 蜘蛛駕籠
- 頓馬の使者 山田洋次 作
- 提灯屋
- 万金丹
- 猫の災難
- お神酒徳利
- 堪忍袋
- うどん屋
- 御慶
- ちりとてちん
- 禁酒番屋
- 三軒長屋
(上)(中)ほど刺さったお題はなかったけど、「三軒長屋」辺りは気になった。上方落語というのもがベースにお江戸に移植されたものが少なくないようだけど、上方とお江戸の違いを味わえるほど、(残念だけど)自分に知識はないなあ。
コロナ禍終息したら、日本全国回って日本の土地を味わいたい。
「蜘蛛駕籠」より
「いやァ、相すみませんて、あやまりゃァ仕様ァねえけどもなァ…… なァおい駕籠屋、俺ァ今日おめえ、川崎の大師様へお詣りに行ったんだ。帰りに船ェ乗ろうと思って、六郷の渡しまで来るとなァ、後ろの方から女の声で持って、あァら熊さん、あァらくゥまさんッて呼ぶんだァ……ふり返ってみるとおめえ、辰公ンとこのかみさんさァ、知ってるかァおめえ、辰公ンとこの嬶ァ?」
という塩梅に、所々知っている土地が出てくるのが、また楽しい。大方もはや落語の当時の面影はない場所ばかりだけどね。
耳で聴かず、NHKの番組や本で知識ばかりが蓄えられて仕方ないと思いながらも、コロナ落ち着いたら是非またライブで色々と聴いてみたいよ。