旧古河庭園ではスケール小さいかも
ヴァージニア・ウルフによるイギリスの小説「オーランド」は、現在でも存在するイギリスらしいカントリーハウスが舞台になっている。
日本の庭園でそれを空想するには限界があるが、どうにか空想できないかと撮影してみた。
この写真にちなんで、こちらを紹介したい。
「オーランドー」ヴァージニア・ウルフ
本当は難解なヴァージニア・ウルフ
ヴァージニア・ウルフを意識するようになったのは、メリル・ストリープやニコール・キッドマンが出演していた映画「めぐりあう時間たち」である。ウルフの「ダロウェイ夫人」をモチーフにしたこの映画、1923年英国、1951年ロサンゼルス、2001年ニューヨークと場面の時間と場所が入り組み、結構複雑な構成なのだが、個人的にはその重層的な文学構造に魅力を感じた。
そこでウルフの著作を読んでみたいと思っていたところ、機会があってファンタジー色の強い「オーランド」を読んだのである。キモはやはり伸長する時間と男性から女性へと性転換する主人公の両性具有かなと。
暴動に巻き込まれたオーランド(男)は
(略)イモリのよだれ入りミルク酒、就寝前に孔雀の胆汁を飲ませ、後は成りゆきに任せた上で、一週間お寝みだったのでございます、と診断する。
といきなり1週間も眠り、なんと女性になって目覚める。
人間三十の坂を越えると、思考の時間が極度に助長し、行動の時間は過度に短縮する。
こういう時間への思い込みや空想を取り入れた描写を楽しく読めた。
僅か三、四百年前この骸骨どもは、何時の世にもいる成上り者よろしく俗世の成功を求めて、成上り者らしく屋敷や地位や勲章を手に入れて出世したが(略)
丹念に場面を描くというより、全体的に奇想天外なストーリーを追いかけている書きっぷりなので、こういう描写に刺さる。
エリザベス1世統治下(1533-1603年)のイギリスから1928年という時間を、男性から女性へと変化を遂げつつ、文学に憧れ生きた主人公がオーランドで、これにはウルフの同性の恋人であるモデルが存在するという。むかしの海外文学はスケールが大きい。
この樫の木を知ったのは一五八八年頃だったろうか、あれ以来、ますます大きく、どっしりと節くれだってきたけれども、今なお生命の絶頂期にある。
1588年に生きていたオーランド(男)は1928年になっても女として生きている。
すると、真夜中の鐘が時を告げ終わった。千九百二十八年十月十一日、木曜日の真夜中である。
小説結びの一文、この日は「オーランド」が出版された日とのことで、芸が細かい。日頃、人々が抱く思いに普遍性を持たせファンタスティックに仕立てているのがいい。