こういう本を読むと、ますますやっぱり生落語聴きたいよねっと。
文庫概要
タイトル | 滝田ゆう落語劇場 |
著者 | 滝田ゆう |
出版社 | 文春文庫 |
カバー・山藤章二って、人物像はどうみても滝田氏の画だから、デザインが山藤氏ということかな。
内容紹介
近年(とは言いつつ、時期不明だけど)落語ものを読む際、矢野誠一氏が関わっていると無条件に手にとってしまう。氏の経歴は不明なのだが、wikipediaによれば生年1935年とあるので、もう随分とおじいちゃんなんだなと。幸いに2021年末現在でもご健在のようではある。
ちなみに、ラインナップは次のとおり。
- 1 王子の狐
- 2 富久
- 3 藁人形
- 4 素人鰻
- 5 ぞろぞろ
- 6 干物箱
- 7 蕎麦の羽織
- 8 夢の酒
- 9 猫の災難
- 10 反魂香
- 11 岸柳島
- 12 湯屋番
- 13 うどんや
- 14 味噌倉
- 15 夢金
- 16 紙入れ
- 演目解説 矢野誠一
各章の最後に記載されている、矢野氏演目解説より気に入ったものを抜粋して紹介。1983年出版なので、当時語った内容ですら既に過去の趣あるかも。
『湯屋番』落語ならではの設定の妙
1980年代は銭湯の存在も不透明になりつつあったけど、最近は若い人たちに手で少し人気が出ているとこもあるのかなと。
何年か前ある作家が、落語家たる者銭湯へ行けと発言して、物議をかもしたことがあった。(略)それに対して、立川談志であったか、昨今の銭湯は、単に身体を洗いに行くところであって、社交場としての機能は失われてしまっている。そんなところへ出かけても取材になどなるわけがないと反論したのを覚えている。
(略)出かけた先がお湯屋という設定の妙は、やはり落語ならではである。
『うどんや』花嫁の父の哀感
2021年現在だと、平成生まれはライトバンなどとは言わないかなと。
屋台で、鍋焼うどんなど、なかなか食べられなくなって、もっぱらラーメンが幅をきかせてる当節だが、その屋台もライトバンを改造したりで、格段に機能的になっている。桂米朝の弟子の誰かが、そんな屋台でラーメンを注文したそうだ。(略)
花嫁の父の哀感なんて、こんな屋台では無理なはなしだ。
『紙入れ』世のフェミニストに聞かせたい
「フェミニスト」と触れること自体(ちょっぴり)時代錯誤かもしれないけど、そこの部分を抜いても、この落語では女の強かな部分が描かれている。が!そこを出し抜くのが、ここの怖い「オチ」の「オチ」で是非ともいろんな噺家で聴いてみたい一話。
間男のはなしは、落語に限らずいろいろあって、そのいずれもがなかなかよくできているというのが面白い。
(略)フェミニストなどと称する軟弱な男どもが、女は弱いものと信じてるのに接すると、「ここにも女にだまされるおろかな男がいる」と、一度、『紙入れ』という落語などきかせてやりたいと思うのだ。
(略)
「オチ」のまた「オチ」の趣があるこの『紙入れ』のもうひとつのオチを僕に教えてくれたのは桂小南なのだが、教わったとき、ちょっとしたブラック・ユーモアだと思った。こちらのほうの「オチ」で演られる機会が少ないのは、あまりに恐ろしすぎるからかも知れない。
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