不要不急の外出は控えるべき昨今だけど、検温を受け、おじさんたちに交じって少しだけ古書販売会をのぞくと、旺文社文庫の滝田ゆうを見つけてしまった。650円。
本のタイトル | 昭和ながれ唄 |
著者名 | 滝田ゆう |
出版社 | 旺文社文庫 |
改めて昭和という時代の幅を感じて
個人的にわりと好きな世界観である。ただ、氏の守備範囲はけして広くないので、一定の作品しか楽しめない気もする。
こちらは「カラー版滝田ゆうの」とサブタイトルがついている。ということで、カラーによる画集に近い感じで、ときおり、いいあんばいで文章がハマっている。
ラインナップは次のとおり。
- 橋
- 少年キヨシ
- やさしいおねえさん
- 酔いどれ行進曲
- トマト少年の頃
- 昭和ながれ唄
自分は「寺島町奇譚」を読了してるので、少年キヨシについては、かなり知っているかも。
やさしいおねえさん
少年キヨシの世界を、もっと大人?の分野へ拡張した感じかな。もしくは、永井荷風が愛したものを視覚的に楽しめる感じとも言えるかな。
この章が一番面白かった。何しろ画がいい。正直、部屋に飾って楽しめる類の画ではないが、雰囲気がいい。
実際の有様は、もっと人間臭いのかもしれないけど、そこを描き手の技量でいい雰囲気に(品を感じさせるように)仕上がっている。それに、ちょっと間延びしている表情もいいんだな。
ほんとういうと、ぼくは、そこを赤線と呼ぶのはあまり好きではない。ぼくの玉の井はあくまで戦前の、そしてあの戦禍に巻き込まれて消え去るまでの玉井であって、ザル法時代に連発された赤線地帯とは、まるっきりべつの世界なのである。(略)そして銘酒屋(めいしや)とくれば、断然、あの、こころやさしきおねえさんたち……。
住んでみて、くらしてみて、しみじとわかるんだ。
「あ と が き」から
次のとおり本人も申しているとおりです。読者がそれ以上のことを要求してもいかんよね。
(前略)とりわけ育った環境のしからしむるところ大いにあって、ただただ人間稼業のくやしくいとおしく、その一途な生きざまを風景として、しぶとく描いてみたかった。ミタカッタ。
この1冊でした(Amazon)
かろうじて、Amazonでも取扱いがあるようだ。