かき氷が先鋭化していると思う
Wikipediaで調べると、削った氷を食べる習慣は平安時代からあったのね。
植物肉の時代だけど、昔の人が美味しい美味しいと食べていたものに興味がある。かき氷みたいなシンプルなものは、どうやって楽しんでいたのかな(みたいな)。
この写真にちなんで、こちらを紹介したい。
「味覚極楽」
子母澤寛(中公文庫BIBLIO)
自分で言うのもおこがましいが、先鋭化とは?
思想や行動が急進的になること
たかが「かき氷」、作り手のアイディアでいくらでもオリジナリティやインスタ映えするかなと。
だけど、個人的には宇治金時が好きだったりする。それに、まずは氷が美味しくないと…
むかし食べ比べとかした。よっぽど暇だったのでしょうね。
ありそうで少ない昔の食べ物の話
いつの時代も、みんな興味あると思うのだけど、この本は大正~昭和で新聞記者として活躍した子母澤寛が、聞き取りしてまとめた内容。
取材している相手は、政治家、華族、役者などだから、庶民とは違う美味しい味を知っているよねと。
- 子爵 石黒忠悳氏の話
いきなり… 味よりも盛り付け。しかも、しじみの粒を揃えるとか。
しじみの貝がみんな同じ大きさで、つまり粒を揃えたところに老人の心がまえがある。金がないので心で食わせる料理であった。近頃は同じ茶をやってもただ贅沢ばかりで、こんなおもむきのあることをする主人はいなくなった。
確かに味も大事だが、料理も(人間も)見た目も重要だなと。
- 男爵夫人 大倉久美子さんの話
この方は、ホテルオークラ創業者?大倉喜七郎の奥様で、新潟県のお姫さまらしいです。
(略)自分の好みをいって、味加減を覚えさせる。女中さんは、ただ味わっただけでわからぬ時は料理場へ行って、板前から直々にその味付けの加減や、材料の扱い方をきいて帰るのだということだった。
ここで語られているのは、喜七郎パパである喜八郎氏が、いつでも自分の好きな味を再現できるよう、女中さんを教育している話。
(言葉は悪いけど)成り上がり者は、なかなか抜け目ない。
しかし、一流コックでもないのに、主人の期待に応える女中もすごい!と思う。
- 日本橋浪華家 古藤嘉七氏の話
他のところでも、美味しい店として登場しているから、当時はなかなかやり手の料理人だったのかなと。
お客はだんだんしつこいものしつこいものと好んで来る。少ししつこい物の後はあっさりしたものがよかろうと思うとそうではない、しつこいものの後は更にしつこいものを差上げるのを喜ぶ方が多い。
それでいて、本人の工夫とは裏腹に、いつでも客はしつこいものを好むらしい。
今も時代も、味は濃い方が喜ばれるかもね。
- 麻布大和田 味沢貞次郎氏の話
これは、自分少しショックを受ける。というのも、きっと昔の庖丁は今と違って、食材に金味をつけていたんだろうなと。それだけ、調理器具(ここでは庖丁)も進化しているんだなと、妙なところで感心してしまった。
抱一が山谷に招かれて初鰹の刺身を出されたが、それに庖丁の金味がついていたといってしかったのは有名な話。
ということで、なかなかむかしの美味しい味のイメージはわかないものの、それでいて、当時の人が食に期待する思いを知ることができ、それはそれで結構楽しめた。
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むかしの美食なら、やっぱりセレブである吉田健一氏の食べ物の話ではないか?
食べ物の話に限らず、吉田健一氏の世界は好きだ。