新宿花園神社近くゴールデン街の裏手
この近辺も犯人の立ち寄り先として警察はマークしていたようだ。
日本列島縦断で殺人&詐欺を重ねた犯人は10歳の少女に正体を見破られて逮捕、そして死刑。再読は辛いけど、一度は読んでおきたいと思っていたノンフィクション・ノベル。
この写真にちなんで、こちらを紹介したい。
「復讐するは我にあり改訂新版」
佐木隆三(文春文庫)
「事実は小説よりも奇なり」の実態例
30数年振りに全面改訂した決定版を読んだ。40章から成って各章に漢字1字のタイトルがついていた。
後半に入ると、筆者の筆も乗って?来るのか、犯人の手際があざとくなってくるのか、読んでる自分もその現場にいるような(極端?)臨場感に見舞われる。
25章を過ぎると舞台は東京、4人を殺害し詐欺を重ねて全国で指名手配となり追っても厳しくなってくる。
- 25:旅
偽弁護士を装い、横領した証券社員の弁護で証券会社へ。しかし、さすが!部長は怪しい言動を見逃さないし、それを察知した犯人の逃げ足も早い。
「失礼ですが、ちょっと……。庶務課長を呼びましょう」
このとき部長は、弁護士の眼が卑しく光ったのを、見逃さなかった。本人に引導を渡して辞表を書かせ、会社名を出さずに済ませるから、いくらか寄越せと、言っているように聞こえたのだ。人事課長といわず、庶務課長といったのは、会社ゴロのたぐいを扱い慣れているからだ。
(略)
急に帰り支度をはじめて、「逃げ足の速さはさすがというべきか」と、証券会社の部長は感想を漏らした。
やがて、最後の5人目を殺害して九州へ飛ぶ。
- 31:朝
詐欺を企み熊本の旅館業も営む教誨師へ訪れるが、ここで10歳の娘に正体を見破られ、家族は必死で警察へ訴えるとともに、自分たちが殺害されないだろうかと怯えつつ犯人を見張る。一方、犯人も不審を感じて逃げの態勢へ。
午前九時すぎ、帰り支度をはじめた。朝食もとらずに、急に福岡市へ行くというのである。(略)どうやら入浴のとき、近づいた捜査員を不審に思ったらしい。
(略)
「失礼ですが、職務質問します」
通りに出たところを、刑事課長ら四人がとりまいた。
「ぼくに?」
客は笑って、教誨師のほうを向いたが、その目ははるか遠くを見ているようだ。
逮捕されるときは、呆気なく。
残り10章足らずは自供の話。
- 33:檻
被害者の家族も辛いが、加害者の家族も辛い。父親への言葉。
「すべて運命。このバカ息子がすることだもんねえ、しょうのなかよ」とつぶやく。
殺害した5人のうちには好意を寄せていた女性も含まれていた。そうでなくても、詐欺の多くは愛憎も交えた女性も含まれていて、それが事件を複雑かつ傷口を広げる原因になったようにも読み取れた。
*女には不自由せなんだな。初めのうち金で買ったが、(略)買わずにすむばあいは買わず、タダで使わせてもらうことにした。(略)しかし、女がいるから犯罪を起こしたわけでもあり、どうもわかりにくいな、女は魔物だよ。そこで一句浮かんだぞ。「犯罪の 前後左右に 女あり」。
最後の熊本での詐欺の後は沖縄へ逃亡し、そこで真人間に暮らそうと思っていたらしいが…
小説以上の事実に読んでいる方も救いはないが、誰もが持っているかもしれないダークな運命は、表面化させてはいけないよね。やっぱり。
映画はこれ!
今村昌平監督、緒方拳主演!
1979年公開。
怖い!だけど、見たい。