「桜の森の満開の下」坂口安吾


六義園の枝垂れ桜はいつもテンション高

こんなにたくさん人がいるから、明るい幻想になっている。

この写真にちなんで、こちらを紹介したい。
桜の森の満開の下坂口安吾

安吾再読、わかったような未だわからないような

まだ社会人も初々しいころ読みました。正直全く不明でした。

今もわかったか?と言えば不明ですが、若いころより、このような観念色強い小説を素直に読めるようなりました。

冒頭に近い一文です。長い。

近頃は桜の花の下といえば人間がより集まって酒をのんで喧嘩していますから陽気でにぎやかだと思いこんでいますが、桜の花の下から人間を取り去ると怖しい景色になりますので、能にも、さる母親が愛児を人さらいにさらわれて子供を探して発狂して桜の花の満開の林の下へ来かかり、見渡す花びらの陰に子供の幻を描いて狂い死して花びらに埋まってしまう(このところ小生の蛇足)という話もあり、桜の林の花の下に人の姿がなければ怖しいばかりです。

wikipediaを見ると「桜の満開時、東京大空襲の死者たちを上野の山に集めて焼いた」という解説がありましたが、こういう光景を目にすれば、このような小説の発想も浮かぶのかも… と少し怖くなります。

そして末尾に近い一文。

桜の森の満開の下の秘密は誰にも今も分かりません。あるいは「孤独」というものであったかもしれません。なぜなら、男はもはや孤独を怖れる必要がなかったのです。彼自らが孤独自体でありました。

自分はどちらかと言えば神経鈍い方なので、「夜=寝る」みたいに割り切って何も感じない(かも)です。しかし、人気(ひとけ)ない満開の夜桜って、神経過敏な方だと狂気引き起こされてしまう孤独さ、恐怖みたいなものを桜は含んでいるかも。

そもそもは、野田秀樹の劇団夢の遊民社に興味あったので、「贋作・桜の森の満開の下」でタイトルを知ったのがきっかけでした。人生経験積んで?改まって再読してみると、舞台向きな作品でいいです。舞台という非現実で、とことん狂気に狂って欲しい。

この1冊でした

桜の森の満開の下 (講談社文芸文庫)

 

桜の森の満開の下 (講談社文芸文庫)