「半七捕物帳」岡本綺堂


ヘッダーの画像は麹町方面から眺めた「半蔵門」。お堀を入れて、極力当時?の雰囲気を感じられるよう撮影してみた(つもり)。

作者の岡本綺堂は1987(明治5)年生まれ、まだまだ江戸時代に暮らした人が生存する環境に居合わせただけに、描かれている内容もなかなか雰囲気がある。今なら女性蔑視と言われそうな発言がありつつも、それは時代の風潮であって、半七親分はわりに女性思いだなと。

現役の半七親分は神田にお住まいだが、語り部となる半七老人は赤坂に隠居している。

半七捕物帳(一)〜(六)

未読の巻は既読したら、追々更新します。なお、タイトル後の()は自分が書き足した舞台となった場所です。やや無理くりでもあるが、神田中心とした半七親分の行動範囲が概ねわかるかなと。

半七捕物帳(一)

この感じで六巻までストーリー描けるのは、すごいよと思いつつ読み始める。町人の暮らしぶりがうかがえるの同時に、人のつながりが密接だから、そこからや不自然な言動を事件解決のきっかけとするところに、妙な説得力が感じられる。

  • お文の魂 (川端)
  • 石灯籠 (日本橋)
  • 勘平の死 (京橋)
  • 湯屋の二階 (愛宕)
  • お化け師匠 (上野)
  • 半鐘の怪 (日本橋)
  • 奥女中 (永代橋)
  • 帯取りの池 (市ヶ谷)
  • 春の雪解 (入谷)
  • 広重と河獺 (浅草)
  • 朝顔屋敷 (お茶の水)
  • 猫騒動 (芝神明宮)
  • 弁天娘 (神田)
  • 山祝いの夜 (箱根)
一巻のみ詳細にご案内

半七捕物帳(二)

二巻目になると、動物(特に猫、狐?、猿)が登場しストーリーに変化が現るるる。

  • 鷹のゆくえ (品川)
  • 津の国屋 (赤坂)
  • 三河万歳 (鎌倉河岸)
  • 槍突き (麹町、甲州)
  • お照の父 (柳橋)
  • 向島の寮 (玉の井)
  • 蝶合戦 (両国)
  • 筆屋の娘 (下谷)
  • 鬼娘 (神田)
  • 小女郎狐 (下総国)
  • 狐と僧 (谷中)
  • 女行者 (茅場町)
  • 化け銀杏 (日本橋、本郷)

岡本綺堂自身、劇作家のこともあり歌舞伎などの引用も出てきた。歌舞伎や落語は、連携されててストーリーの味わいの奥行きを楽しみたければ、いろいろと触れてみたい分野だなと。

半七捕物帳(三)

「旅絵師」はタイトルからも想像できるよう、隠密が絵師になりすましての物語で、半七は語り部だけで活躍する話ではなかった。自分の手柄話だけでなく、伝聞物もあり、お江戸以外でのミステリーに引き込まれる。

一方、犯人の多くが「引き回しの上、打首獄門」とかで(かなり)切ない。一巻ではそこまで触れてなかった。

  • 雪達磨 (神田)
  • 熊の死骸 (品川)
  • あま酒売 (向島)
  • 張子の虎 (品川)
  • 海坊主 (品川)
  • 旅絵師 (奥州)
  • 雷獣と蛇 (深川)
  • 半七先生 (神田)
  • 冬の金魚 (神田)
  • 松茸 (深川)
  • 人形使い (上野)
  • 少年少女の死 (外神田、田町)
  • 異人の首 (横浜)
  • 一つ目小僧 (千駄ヶ谷)

半七捕物帳(四):未読

半七捕物帳(五):未読

半七捕物帳(六):未読

「半七捕物帳を歩く」ぼくの東京遊覧

著者は田村隆一(朝日文庫)、各章に掲載されている地図が良い。

表紙・扉 伊藤鑛二
地図・大杉麻規子

カッコ付きの漢数字は、上記の収録されている巻の番号です。

  • 青山の仇討 青山
  • 河豚太鼓 浅草
  • (三)熊の死骸 高輪
  • 正雪の絵馬 四ツ谷大木戸
  • 歩兵の髪切り 神田小川町
  • 妖狐伝 鈴ヶ森
  • むらさき鯉 飯田橋
  • (二)向島の寮 玉の井
  • (一)お化け師匠 上野
  • (一)奥女中 永代橋
  • (二)狐と僧 谷中
  • (三)松茸 深川
  • (三)冬の金魚 神田岩本町
  • (一)春の雪解 入谷
  • (一)湯屋の二階 愛宕
  • 二人女房 府中
  • (一)帯取りの池 市ヶ谷
  • 山祝いの夜 箱根
  • (二)津の国屋 赤坂
  • (二)蝶合戦 両国
  • ズウフラ怪談 白山
  • 柳原堤の女 神田須田町
  • 菊人形の昔 団子坂
  • (二)三河万歳 鎌倉河岸

ところで、田村隆一(1923〜1998)氏とは大正生まれで「戦後詩に大きな影響を与えた」(wikipedia)詩人のようで、少し気になる方です。

「文庫あとがき」を読む限りでは、なぜこのような作品ができたのかは不明だが、もともとはフォトエッセイのようだ。しかし、残念ながらフォトの掲載はなく土地の地図と文章のみ。作品を知ってて読むと悪い味ではないが、結末は伏せられてもいるので、作品を知らず読むと消化不良になるかも。

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「随筆銭形平次」野村胡堂

出す好きな(旺文社文庫)より。
カバー 三谷一馬
表紙も乙だな。

実は自分、岡本綺堂(半七)と野村胡堂(銭形平次)が頭の中で一緒になっておりました。タイトルのとおり、「銭形平次」に関する著者の思い出などなどがまとめられている。

目次というか、構成は下記のとおり。

  • 銭形平次以前(12作品)
  • 平次誕生(7作品)
  • 捕物帖を語る(2作品)
  • 銭形平次作品年譜

ということで、銭形親方の捕物帳話ではない。

銭形平次以前

ここでは、幼少期から昭和6年にオール読物で銭形平次の捕物帖を始めるまでの思い出のようなものを語っていた。

出身地である岩手県でのこととして「盛岡の思い出」には

山田敬一——の名は、明治三十年前後の盛岡中学に籍をおいた程の人は大抵知っているはずです。東京の中学から転校する時、東京の中学生のあらゆる欠点を、黒木綿の紋付と一緒に、盛岡の中学へ輸入した男でした。

他にも石川啄木などが割とリアルタイムの時間軸で触れられていて、野村胡堂氏が岩手県出身であったのが、発見でしたな。

「人物五十年」では

芸の力というか優れた素質のせいというか、こういった催眠術的な魅力の持主は、明治初年の沢村田之助なども持っていたことであろうし、飛び離れた比較で変ではあるが、近代の名ピアニスト、かつては波蘭(ぽーらんど)の大統領であったパデレフスキーなどという人も、ステージに出て来ただけで、聴衆を夢中にさせたといわれている。

なかなか味わい深いことおっしゃる。

平次誕生

「捕物帖談議」

近代法の精神は、行動を罰して動機を罰しないことになっている、が、我々が描くところの捕物小説においては、行為を罰せずに、動機を罰してしばしば溜飲を下げているのである。
(略)
 捕物小説の楽しさは、この近代法の精神を飛躍した、一種のヒューマニズムにあるのかもしれず、奔放な空想のうちに、自分勝手な法治国を建設する面白さにあるのかもしれない。

著書のなかでも度々語られているけど、探偵小説や推理小説と捕物小説を別扱いにしているし、捕物小説は日本独特なものらしく、オリジナルとしては岡本綺堂の「半七捕物帳」となるらしい。

銭形平次捕物は分量多そうなので、全部は無理だろうけど(それほどヘビーな捕物ファンでもないので)… 名作は触れてみたい。

この1冊でした(Amazon)

古い作品で電子になってしまうと、なかなかお得だけど、こういう作品こそ和様式仕立てのハードカバーで夜な夜な枕元で読み継ぎたいかも。