某古書店のTwitterのTLに流れてきて、「あぁステキ!」思ってよく見ると自分が愛する旺文社文庫ではありませんか!即買いです。さほど無理な金額ではなかったですが、新刊ハードカバーの本が購入できる程度で、ちょっとした骨董品を手に入れることができた満足感。
本のタイトル | 季節を料理する |
著者名 | 中江百合 |
出版社 | 旺文社文庫 |
昨今、食べ物については全く季節感が失われつつあるし… いずれ食材の季節感だけでなく、お肉も魚も代替素材なってしまえば、もうそれこそ季節なんて関係なくなってしまうのか。それとも、かつて春の食材が冬になってしまったりするのだろうか?
など意識すると、味わい深く読める1冊であった。
タイトル「季節を料理する」もいい
文庫本としては1982年刊行なので、自分からすれば大昔のイメージないけど… おおよそ40年前ということでしょうか。著者は1969年に亡くなられている。
大まかなラインナップは
- 序によせて 中村汀女
- 序に代えて 阿川弘之
- 百合様のこと 河野貞子
- 四季の一品
- 十二か月の献立
- 日本料理の基本
- 料理いろはかるた
- この本を読んでくださる方々へ
- 挿絵 長原坦
前者3つはタイトルから察するように、ご挨拶文を寄せている感じなので。あの?阿川弘之氏や中村汀女女史が一歩下がって文章を寄せているのだから、この著者の存在感の大きさがうかがえる。中江百合(1892年〜1969年)
wikipediaで調べてみると、女優・東山千栄子(自分は名前を知っている程度)の実妹で、
16歳で素封家中江家に嫁ぎ、料理研究を始める。華道家の勅使川原蒼風、陶芸家の富本憲吉の後援者でもあり、終生一級品の追求と美味三昧の生涯であった。家庭料理の第一人者と紹介されることが多い。
という感じの方だそう。
「四季の一品」からの抜粋
桜花の塩漬とあられの清汁
あられ(というより、かきもち)をおかずにしてしまうのは、素敵!と思った。これなら自分にもできるかと。
桜の花の塩漬は、デパートにでもどこにでも売っています。あられは日本橋『枡久』にぶぶづけ用の、塩だけで味をつけて炒り上げたかわいいあられを売っており、これなら最適ですが、要するに醤油を使わない塩味のあられか、かきもちならなんでもいいのです。
みじん豆腐清汁
意外に感じたのは、結構「味の素」が登場すること。
鰹節と昆布で濃いだしを取り、塩を入れずに醤油だけで吸いかげんの味をつけます。昨今の醤油は美味しさが足りないので、味の素で少し補いましょう。
「十二か月の献立」では、月別に提案しちえるのだけど、例えば
二月(如月)
- 前菜(卯の花寿司(卯の花 こはだ))
- 椀盛(牡蠣豆腐(ほうれん草 口柚子))
- 刺身(鮪 ひらめ)
- 雀のたたき(おろし煮 さらし葱)
- 口代り(くわいと長芋の挽茶入りきんとん)
- このわた汁(あられうど 八丁味噌仕立)
- 漬物盛り合せ
なぜこの月を選んだかといえば、なんと「雀のたたき(おろし煮 さらし葱)」って…
実際に読んでみると
雀は羽根をきれいにむしり、毛焼きをして、腹の下から鋏を入れて断ち割り、臓物を取り出し、食べられものと食べられないものとを選り分け、食べられるもの全部をきれいに洗っておきます。
続いて
まず大きい庖丁で、はじめにザクザクと切ってから庖丁でたたきはじめ、(略)指先でさわってみてザラっとした感じがまったくなくなった時、これをひと口の団子にし、だしを煮立たせたところへ団子を手早くほうり込んで、火の通るまで煮ます。
鳥のつくねを想像すれば良いのかもだけど、1980年ごろに「雀のたたき」は家庭で作れる料理なのだろうか?と思案してしまった。少なくともうちのかあちゃんには無理だな。
「日本料理の基本」の章では
- はじめる前に
- 日本料理の基礎知識
- 料理のこつ
- 野菜
- 魚
とあり、料理の基礎がなっていない自分にとって妙に役立つ読み物であった。写真などの画像情報は全くなく文章だけで想像させる内容だけに、書き手の技量も重要だなと。
それと、本書に渡って感じられたのは、献立を考えることを非常に楽しんでいる感じが読み取れた。
この1冊でした(Amazon)
2003年に復刊されているようだけど、こちらももはや古書→骨董品へとなりつつかな。