作家・批評家の丸谷才一と、劇作家の山崎正和による対談形式なのだが、文明批評の側面も感じられて、読んでいて好奇心が駆られると同時に、「そうか、そういう考え方もできるんだな」と妙に勉強になったりもする。
文庫概要
タイトル | 二十世紀を読む |
著者 | 丸谷才一・山崎正和 |
出版社 | 中公文庫 |
古本屋で物色していると、和田誠の表紙と丸谷才一や井上ひさし著書の組合せをしばしば目にする。相性のよい組み合わせだったのかなと。それにしても自分、積んでいる文庫本に丸谷才一氏が関わっている本は少なくない。
内容紹介
1999年に発行された文庫本なので、2021年の今となっては、読みながら早くも過去を振り返る感の思いもある。
下記のラインナップだが、各々のテーマにはテーマの素材となる書籍がある。
- まえがき(山崎正和)
- カメラとアメリカ
- ハプスブルク家の姫君
- 匪賊と華僑
- 近代日本と日蓮主義
- サッカーは英国の血を荒らす
- 辺境生れの大知識人
- あとがき(丸谷才一)
- 解説(鹿島茂)
せっかくなので、各々の書籍も紹介しておく。
- カメラとアメリカ
『美しき「ライフ」の伝説 写真家マーガレット・バーク―ホワイト』 - ハプスブルク家の姫君
『エリザベート ハプスブルク家最後の皇女』 - 匪賊と華僑
『匪賊 近代中国の辺境と中央』『中国の大盗賊』 - 近代日本と日蓮主義
『化城の昭和史』 - サッカーは英国の血を荒らす
『フーリガン戦記』 - 辺境生れの大知識人
『エリアーデ回想 一九〇七 ― 一九三七年の回想』『エリアーデ日記 旅と思索と人』
ハプスブルク家の姫君
『エリザベート ハプスブルク家最後の皇女』こちらが参考図書になっている。
むかしから歴史もの好きだから、この本は20年近く前の出版と同時期に読んだ記憶がある。
全体的にグローバルな視点が網羅されているなと感じた。さすが!と感じると同時に、現在の世界動向を眺める上でも参考になるなと。
丸谷:(略)そのとき、やっぱり十九世紀の世紀末らしい世紀末があったのはロンドンとウィーンなんですね。どういうわけか、パリの世紀末とかニューヨークの世紀末は、ピンとこないんですよ。
一見どうでもよい一言に自分は刺さる。
サッカーは英国の血を荒らす
こういう発言とかね。
丸谷:(略)アメリカ人だからこれに興味をもち、アメリカ人だから調べるということが僕は面白いと思いましたね。「イギリス文学は、イギリス人の学者の本だけ読んでいるとわからない。フランス人の学者の本を読まないと、客観的にみることができない」という、島田謹二先生の比較文学的立場が良くわかりました。
丸谷才一氏の著書は結構積んであるので、ボチボチ読み進めたい。けど、和田誠氏の装幀にもひかれて、次々と新しい積書をしてしまうのかな。