マーク・トウェインは福沢諭吉と同じ1835年に生まれ、幕末から大正初期までの時代のアメリカで活躍した作家のようだが、wikipediaを読む限りでは結構アメリカンドリームの体現者のようにも見える。この先入観を抜きにしても、子供の視線で描かれたストーリーを大人になっても純粋に楽しめるというのは、それだけストーリーに説得性があり、かつ自分の内にも子供ようなピュアな部分が残ってて、そこに共鳴したかな? なんて。
文庫概要
タイトル | トム・ソーヤの冒険 |
著者 | マーク・トウェイン |
訳者 | 鈴木幸夫 |
出版社 | 旺文社文庫 |
表紙は初版の挿絵らしい。ちなみに原題は「The Adventures of Tom Sawyer」なので、邦訳もそのままだけど、はまっていると思う。
桜井誠氏による挿絵・カットもいい。wikipediaで調べると
1942年より雑誌の挿絵の執筆を始め、その後リンドグレーンの『長くつ下のピッピ』を初めとした児童書や絵本、教科書などの書籍の挿絵を数多く執筆。児童書などの装丁も行った。
とある。どことなく既視感があると思ったけど、児童書の挿絵では作品が多い方のようである。
内容紹介
児童文学として有名だけど、大人になっても一度は読んでおきたい小説だなと。
著書「まえがき」によれば
ハードフォード、一八七六年
とあるから、150年近く前に書かれた小説なんだなと。
解説にも
一八四〇年代を舞台とし、産業革命の波がまだ西部にとどかなかったころである。おだやかな、悪くいえば、どんよりした西部ではあるが、開拓者の小さな町や村には暴力ざた、殺人騒ぎも珍しくはなく、粗野なままで、文明化されるまでには、その後かなりの年月がかかっている。
著者による「まえがき」「むすび」を入れて36章から構成されているが、読了まであっという間に読み切り、読み終わってみると色々な話があったのだなと。
- まえがき
- 第一章 すてきな悪童
- 第二章 塀ぬりのペテン
- 第三章 あこがれの君
- 第四章 日曜学校異変
- 第五章 ハサミ虫騒動
- 第六章 ハックルベリーとの出会い
- 第七章 求愛のしくじり
- 第八章 あこがれの海賊
- 第九章 墓地の殺人
- 第十章 不吉な犬声
- 第十一章 良心のとがめ
- 第十二章 ねこに劇薬
- 第十三章 海賊の船出
- 第十四章 島のキャンプ
- 第十五章 ひそかな帰宅
- 第十六章 秘密の計画
- 第十七章 あらし
- 第十八章 自分の葬式
- 第十九章 恋のかけひき
- 第二十章 トムのいいぬけ
- 第二十一章 罪のひっかぶり
- 第二十二章 学芸会の珍景
- 第二十三章 ついてない休暇
- 第二十四章 意外な証言
- 第二十五章 あとのたたり
- 第二十六章 宝さがし
- 第二十七章 幽霊屋敷の財宝
- 第二十八章 なぞの二号室
- 第二十九章 つきとめた巣
- 第三十章 ピクニックの夜の恐怖
- 第三十一章 一難、また一難
- 第三十二章 洞穴の危機
- 第三十三章 奇跡の生還
- 第三十四章 さがしあてた宝
- 第三十五章 あらわれた大金
- 第三十六章 盗賊団結成
- むすび
こういう小説をワクワクして読めるアラフィフ女子の自分、まだ子供のような感覚が残っていて嬉しく思う。
第二章 塀ぬりのペテン
いきなり、少々説教臭いと思ったが、その後はそれほどでもなく、トムの行動や思考で感じさせてくれた。説教っぽいのは、昭和の翻訳のせいかな?
つまるところ、世の中はそれほどはかないものではない、とトムはひとりごとをいった。(略)――つまり、おとなにでもこどもにでも、なにかをほしがらせようと思えば、ただ、それを手に入れにくくさせればいい、ということである。
第三十六章 盗賊団結成
中弛みする間もなく結末まで来るのだが、お宝発見で見せる「さもしい」人間性を提示するところが、この著者の特徴かと思う。訳者の方がこういう部分をどう訳すかも気になる。自分は人間小さいから、皮肉なのが自分は好きかな。
読者は、トムとハックの思いがけない幸運が、貧しい小村セント・ピーターズバーグに大評判をひき起こした、と思われていい。(略)しまいには、町の人たちの多くが、不健全な興奮にはりつめたばかりに、理性がよろめいてしまった。
この1冊でした(Amazon)
柴田先生の翻訳は是非読んでみたい。大人向けの記述をどう訳されるか、気になる。