時代に逆光してではないが、時代に全く要請されていないけど、普遍性のある日本を良く知る中国人のおじさんによる食エッセイを読んだ。食べることから、これだけいろんな発想が出てくるのは、知識が詰まったタンスがどれだけ大きいのやら。
文庫概要
タイトル | 食は広州に在り |
著者 | 邱永漢 |
出版社 | 中公文庫 |
内容紹介
中国語で漢字4文字のタイトルがついているけど、パソコンで表示できる自信がないので、副題としての日本語のみ掲載しておく。
- 食は広州に在り
- 食べてねる人生
- 料理も芸術のうち
- 野郎の知ったかぶり
- 麺と塩魚の話
- 麺食う虫
- 現代版・麺食う虫
- 傍杖を食った話
- 冬瓜の季節
- チャプスイの起り
- 文士は食わねど
- 華僑の冷飯ぎらい
- コックの採用試験
- 花よ、ひらけ
- とかく世間は手前味噌
- 豆腐を食わせる話
- 屈原にあやかる
- 海の幸は南から
- 酒徒を論ず
- 袖の下は風吹くばかり
- 豚肉と中国人
- 口舌の徒のつどい
- 再び豆腐について
- 歳末ともなれば
- 中国版・花より団子
- われら杜甫の徒
- 庖丁を買うまで
- 二人のためのお茶
- 東西茶飲み話
- 花も実もある人生を
- 解説 丸谷才一
解説は私一押し著述家の丸谷先生。
肉山脯林 –豚肉と中国人–
ともに生命力が強そうな人種である。ちなみに、ここでの将軍とはアメリカ南北戦争の方。
ある時、新聞記者につかまって「閣下の見聞中、最も奇抜な光景はなんでありましたか」と質問された。将軍は即座に答えて、「それはシナの小商人が猛烈な競争によってユダヤ人を駆逐している光景だ」と言った。さらに、「シナにいるユダヤ人が豚肉を食べているのを見て驚嘆した」と付け加えた。一八七九年の話だから、八十年もたった今日ではだいぶ事情も違っているが、(略)
今年臘日 –歳末ともなれば–
改めて言われと、妙に納得させられる。飲食業の大変さと面白さか。
とにかく、食い物屋は百姓仕事とは違うから、隣の人のやることをそのまま真似るだけではだめで、どうしても独創が必要である。
百年好合 –花も実もある人生を–
何気に自分と同じ信念をお持ちだったのかと。もはや量より質を追及して食べることを楽しみたい(年頃)。
これは食生活の楽しさは料理屋や宴会場よりも、家庭における三度三度の食事のなかに発見すべきものだという私の信念によるものである。
解説
おお、全部読んだ!自分は結構オールディーズ指向。
たとえば吉田健一の『舌鼓ところどころ』および『私の食物誌』、邱永漢の『食は広州に在り』、そして檀一雄の『檀流クッキング』は、そのことをよく示すだろう。