「山の音」川端康成

日本初のノーベル文学賞作家、命日1972年4月16日だけに、この時期ふと思い出しまする。

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カバー　山野辺進

２作品が収録されていたが、ここではタイトルになっている前者をば。

「山の音」では昨今の妙に長く凝ったタイトルと異なり、下記のシンプル＆ポエティックなタイトルが並び（我ながら）集中して読めた。作品の評価はともかく（そういうこと語れる資格もなく）純粋に好きなタイプの作品なんだと思う。どこかで「敗戦日本人の哀しみ」を描いた作品として

が挙げられているのを読み、そんな先入観も持ちながら読んでしまった。この観点で言えば、著者をモデルとしている主人公（舅）の息子（嫁の夫）を中心に話が進むという解釈もできるのかなと。

最初の単行本への収録の後、昭和27年以降に書き加えたらしい。それだけに、著者の強い思い入れを感じる。

プラトニックラブ（多分この物語のテーマではない）が続くが、舅（信吾）が嫁（菊子）の気持ちを先読みするのも少し怖いが、菊子の気持ちより、その先にある息子との関係を危ぶんでいると読み解きたい。それにしても、もはやこのような同居も少ないだろうから、こういう家族生活（人間関係）もあり得ないなと。

それにしても、あのような大木が、時ならぬ芽を出しているのを知らずに過ごすのは、なにか菊子の心に空白があるようで、信吾は気になった。

それでいて、こういう思いが頭にこもるって、舅さんもまだまだ現役である。否、この思いは息子へ向かっているのである。

しかし、なにかいまわしい頽廃と背徳の臭いが、信吾の頭にこもるようだ。

いかん、この小説はそういう？小説ではないのである。

多くの出版社から発売されているけど、ここはやっぱり新潮文庫で。