「LAコンフィデンシャル」J・エルロイ


「ナイト・アウル事件」のそれは店名である

カタカナだとわかりずらいが、「夜のフクロウ」という意味で、宵っ張りの皆さんが集う店というノリだと思う。フクロウ(ミミズク?)は宵っ張りの象徴だしね。

が、「LAコンフィデンシャル」は「ナイト・アウル」で発生した銃の乱射事件の真相解明がストーリーなのだけど、事件発生の店名がナイト・アウルって命名がうまい。こういう細かいディテール(とくに言葉使いとか訳語)に自分ははまりやすい。

この写真にちなんで、こちらを紹介したい。
LAコンフィデンシャル(上・下)
ジェイムズ・エルロイ
文春文庫

それにしても、なかなか「ナイト・アウル」にぴったりな光景だと我ながら自惚れている。

「コンフィデンシャル」というタイトルもまたいい

400ページ足らずの文庫上下巻というボリューミーなアメリカン・ノワール小説。アメリカン・ノワールとは、悪い奴らのお話という感じである。

ジェイムズ・エルロイのLA4部作は、ロスアンジェルスの警察官が正義の味方のふりをしてギャングたちとの攻防を繰り広げる話であり、決して正義と悪の勧善懲悪な内容ではない。四部作とも各々で読めるが、続けて読むと、微妙に前作を引きずっている伏線があり、作品群に幅の広さだけでなく奥行きも感じさせる深いものになり、もはや大河小説の域に達するかなと。

今回もストーリーで読ませる小説なので、読んでて引っかかる部分は少ないが、軽くでも触れてみれば… 今回もジャズをノワールな雰囲気を演出するために利用している点が魅力的だ。

飲み物は背の高いグラスに入っていて、ジャズはクールで、マリワナの煙は湿っぽく、むせび泣くテナー・サックスの旋律に合わせて白と黒のロマンスがビーバップする暗いホットなスポットに。

エドとは、このL.A.コンフェデンシャルで最もメインな主人公である刑事。エルロイの小説は、ときにすごく感覚的に呼びかけるとこがあり、そういう記述がとても小説からリアリティを感じさせてくれる。

彼らは、相手の最大の弱点を見つける感覚を研ぎ澄ましてくれた。その感覚はとても鋭くなったため、エドはときどき鏡で自分を見られないほどだった。

それにしても前半(上巻)は、後半のクライマックスのための舞台装置作りのため、次から次へと出来事が積み重なるので読んでいてキツくもある。どれが本線で、どれが話を盛り上げるための傍道かを見極めるのも難易度が高い。登場人物もカタカナだし。しかし、後半(下巻)も少し過ぎると、だんだん核心(誰が一番悪い奴なのか)へと絞り込まれていくので、読んでいても引きずりこまれてゆく。

ナイト・アウル事件とはこの小説のキモとなる事件で、その犯人を炙り出すのがストーリーだけど、下巻に入ると、この事件が発生した背景はもはや作家が作りだした世界ではなく、ある悪巧みが一気にここへ向かってきた自然な帰結として納得させられる。そこがやはりエルロイのすごいとこだと思う。

なんだか宙に浮いているような気分だったが、単純な本能がエドを追い立てていた。ナイト・アウル事件はいかなる刑事の決意も通り越して、独自の生命をもちはじめていた。彼が証拠をさぐり出そうが出すまいが、そしてそれを将来の計画に利用しようがしまいが、自らの意志で存分におそろしさを発揮しているように思えた。

エルロイの小説は、西海岸モノ(LA4部作)よりアメリカン・タブロイドのような全米もの(どちらかと言えば東海岸かな?)から読み始めたのだけど、この西海岸モノはメキシコ人もからみ地域性を感じさせてくれて、そういう観点からも楽しめる。

ちなみに原題「L.A. Confidential」のコンフィデンシャルは的確な日本語訳が難しいものだね。「機微情報」とか「機密扱い」みたいな使われ方をするけど、まあようするに「秘密情報」みたいなかんじかなと、悪い意味での。

ところで、エルロイは未だ現役の作家だろうか?

作品も読み重ねてゆくと、だんだん正義のふりをした警察官も悪い方へと深みを帯びてゆくが、それでも彼らに少なからずの共感をおぼえてしまうのは、彼らは彼らなりの使命感を携えているせいだろうか。何が彼ら(しいては人々)を執念深くさせるのか… それを考えずにはいられなくなるのも、エルロイの小説かなと自分は思っている。

彼ならば、今のトランプ政権をどんな悪い奴らで暗黒を描いてくれるかな。気になるけど、その暗黒はエルロイにとって魅力を感じさせない気もする。絵にならない感じだし。

映画はこれ!

タイタニック」が話題になった1998年製作、20周年記念版が発売されるとか。

youtu.be

映画を観る前に小説読んでストーリーと勘所を抑えておく方が、絶対映画を楽しんでみることができると思う。ストーリーは複雑だから、予備知識ある方が純粋に俳優の演技を堪能できるYO!

配役は

それなりに、渋い布陣。

この1冊でした

LAコンフィデンシャル 上 (文春文庫)

 

LAコンフィデンシャル 上 (文春文庫)

 
LAコンフィデンシャル 下 (文春文庫)

 

LAコンフィデンシャル 下 (文春文庫)