初めての萩原朔太郎
詩はよくわからず敷居の高さを感じている。中学高校で習ったものは嫌いではなかったけど、「智恵子抄」と「海潮音」と「雨ニモ負ケズ」ぐらいしか、すぐには出てこない。
たまたま出会いがあって「月に吠える」の詩人・萩原朔太郎の著書を読んでみた。幸い詩よりは馴染みがある短編や随筆だった。
本のタイトル | 猫町 他十七篇 |
著者名 | 萩原朔太郎 |
出版社 | 岩波文庫 |
バラエティに富んでいた最初の1冊
ラインナップは次の感じ
まず短編、
Ⅰ
- 猫町
- ウォーソン夫人の黒猫
- 日清戦争異聞(原田重吉の夢)
次に散文詩、
Ⅱ
- 田舎の時計
- 墓
- 郵便局
- 海
- 自殺の恐ろしさ
- 群集の中に居て
- 詩人の死ぬや悲し
- 虫
- 虚無の歌
- 貸入札
- この手に限るよ
- 坂
- 大井町
そして、随筆。
Ⅲ
- 秋と漫歩
- 老年と人生
猫町
タイトルにもなってる「猫町」が印象的で、舞台やドラマとか演出次第で面白そうかなと。
そして、次の一文は理系的だなと。「同一空間における同一事物の移動」は学生時代の応用数学で習った写像を思い出した。
旅への誘いが、次第に私の空想から消えて行った。昔はただそれの表象、汽車や、汽船や、見知らぬ他国の町々やを、イメージするだけでも心が躍った。しかるに過去の経験は、旅が単なる「同一空間における同一事物の移動」にすぎないことを教えてくれた。
続けて
何処へ行って見ても、同じような人間ばかり住んでおり、同じような村や町やで、同じような単調な生活を繰り返している。
これは!ずばり私たちの日常のネガティブな部分を描写していると感じた。そして(田舎で有意義に暮らしている方々には大変失礼な物言いになるけど)…
概して文化の程度が低く、原始民族のタブーと迷信に包まれているこの地方には、実際色々な伝説や口碑があり、今でもなお多数の人々は、真面目に信じているのである、(以下略)
この迷信がいろんな事件や問題を引き起こす動機になって、ミステリーができそう!みたいな気分になった。
しかもその美的方則の構成には、非常に複雑な微分数的計算を要するので、あらゆる町の神経が、異常に緊張して戦いていた。
雰囲気を説明するのに「微分数的計算」と言い切ったところに、やっぱり理系的な感覚があるのではと納得してしまった。
いつか是非とも有名な「月に吠える」「青猫」くらいは読んでみたいけど、もっと短編集とか読んでみたかったかな。