新小岩は何区なのだろう?
自分、西東京在住が長く東東京については、とんと疎いから興味がそそられる。
西東京に疎い人が、荻窪(自分が住んでいるとこ)と吉祥寺を混同しても、失礼だとは思わない。
この写真にちなんで、こちらを紹介したい。
「1974 ジョーカー」
デイヴィッド・ピース/酒井武志(訳)
(ハヤカワ文庫)
何故ならば、作者のピース氏は
マンチェスター大学を卒業後、1991年からトルコのイスタンブールで語学を教える。その後、1994年に日本に移住。東京の新小岩の小さなアパートでデビュー作『1974 ジョーカー』を書き上げた。
とのこと。新小岩って、どういう雰囲気の場所なのかしら。
ブリティッシュ・ノワールもあるのか!
そもそものきっかけは、「Xと云う患者 龍之介幻想」を読みたいと思ったこと。しかも訳者が(自分が注目している)黒原敏行氏である。
で、作者の英国人デイヴィッド・ピース氏を調べてみると、アメリカン・ノワールの巨匠エルロイ氏に傾倒しているとくるから、やっぱりピース氏の追い求めている世界を読んでみたいなと手にしてみた。
(個人的な好みで恐縮だけど)結論から言ってしまうと、こちらを読み終えて、逆に改めてエルロイ氏のドス黒さが深く濃いのを感じた。
- 第一部 ヨークシャーが呼ぶ
- 第二部 ささやく草
- 第三部 おれたちは死んだ
起(第一部)承転(第二部)結(第三部)と全体像はわかりやすい。
前から欲しがっていたものをクリスマス・プレゼントにもらったが、サイズと色がちがっていた、という気分だった。
こういう感覚的な描写は割と好きで、エルロイ氏に比べると(訳にもよるのだろうが)読み易かったのだが、ストーリの練りが中途半端かなと…。
<未来は過去と同じくすでに書かれています。変えることはできなくても現在の傷を癒すことはできます>
ある予言めいた意味深長なコメントなのだが、こういうコメントがストーリーの裏付けになっていない辺りがエルロイと違う気がする。
エルロイの場合、こういうコメントが後々「あーこういう結末だったのか」と細かく伏線張っているのだけど、これがその場限りで、後々繋がらなかった。
それに、主人公が思う(こういう?)中途半端な感傷がいけないと思う。そこもエルロイと違う。
頬を涙が流れたが、痛みのためではなかった。
”何てひどい世の中に暮らしているんだ”
エルロイの場合、主人公もどこまでも黒くてセンチメンタル(感傷)は見せない。非情を強調したかったのかもだけど、逆効果な。
全員が正気を失った
主要な登場人物が全員暴走するのだから、改めてそれを言わなくても。
と、(厚かましくも)やや辛辣になってしまったが、ブリティッシュのノワールにも関心があるし、その著者が日本に興味を抱いているというから、四部作の残りもボチボチ読んでみたい。
- 1974 ジョーカー (2001年7月)
- 1977 リッパー (2001年9月)
- 1980 ハンター (2002年5月)
- 1983 ゴースト (2004年5月)
多分、この手の作品より、外国人のピースが描く芥川の世界の方が読み応えあるのではないかと。