棕櫚の植込にはいつ出たのか
小説で描かれる棕櫚(しゅろ)からは絵画的な一面を感じさせてくれるなと、何となくそれっぽい雰囲気ということで。
棕櫚の植込にはいつ出たのかさらさらと風が鳴った。
この写真にちなんで、こちらを紹介したい。
「花筐(はなかたみ)」
檀一雄(講談社文芸文庫)
愛読書「火宅の人」の原点を知る
万人にオススメできる小説ではないですが、私は女優・檀ふみさんのお父さまによる、この長編が好きで、機会?があると再読している。内容はいずれまたということで。
それでもって、昭和11年に発表された初期の短編「花筐」を読んでみた。昭和11年ですか…。
花筐(はなかたみ)
大林映画監督の思い入れも強いこちら。1回目読んだときは正直よくわからなかったので、今回は著者の思い入れを見出すべく読んでみた。
私の少年達はこの町の自然から無限の啓示を受けると同時に自分達の情熱のうらでこの自然もまた無限に改変できると信じていた。そこから私の物語がはじまる。
大林氏は、そこに反戦?の思いも読み取っていたようだけど、自分は純粋に若気の至り(年が若くて血気にはやったために無分別な行いをしてしまうこと)に力点をおいてみた。
鋭い個性は磨損し隠蔽しつくされて、教授達の顔にはたぐいない安堵と、同時にまた例のにがい焦慮がもどってくる。学校とはこのような不可解な有機作用を営む性懲りのない組織体のことである。
学校を表現するにも、諦念を感じさせる。
すると又ゴトリと隣の少年が立上った。例の畸形のように巨きな頭の持主である。その頭をゆらゆら空気のなかに浮遊させ、ゆっくりと出ていった。何という独創的な退場だ。
シュールな描写は時代をあいまいにしてくれ、たまにこういう雰囲気も好きだなと思う。
少年達の恋愛というものは不思議なものだ。自分を信じてくれる恋人をすぐに拘束だとはきちがえる。その信頼を受けて自分が百倍も美しくなっていることを忘れるのだ。
フム。文庫本50ページ足らずの短編は全体を通して観念的な雰囲気だった。読者次第にいかようにも読み取れるかなと。
再読しても(残念ながら)自分は強い何かを感じることはないものの、改めて「花筐(はなかたみ)」という少し甘めのタイトルが気になり始めた。著者のロマンかな?
収録一覧
「白雲悠々」「ペンギン記」はエッセイや紀行文に近い系統だった。
- 花筐(はなかたみ)
- 元帥
- 白雲悠々
- ペンギン記
- 誕生
- 光る道
自分にとって「火宅の人」が全ての檀氏だけど、もう少しその小説世界を広げてみたいと考えている。
映画はこれ!
「花筐」を実際読んでみたいと思った動機である。
2017年に公開された映画で、実はまだ見逃している。
【予告編#1】花筐/HANAGATAMI (2017) – 窪塚俊介,満島真之介,長塚圭史
大林宣彦監督が長年温めていたらしい。かなり意外だった。