自分の無知をさらけ出すことになりますが、「赤ずきんちゃん」や「シンデレラ」の作者はこの方だったのか!と発見でした。同じ作家であったというのも、驚きでした。アンデルセンかグリム兄弟かと思ってました(知識の底が浅い)。
本のタイトル | 長靴をはいたねこ |
著者名 | シャルル・ペロー |
訳者名 | 辻昶(つじとおる)/寺田恕子 |
出版社 | 旺文社文庫 |
しかし、タイトルになっているとおり「長靴をはいたねこ」が一番読み応えあり、この文庫本に限っては、表紙の画家・橋本勝氏のシュールな挿絵がまたいい。
大人の感覚で読むと童話はシュールに楽しめる
ところで、シュールとは?と調べてみれば、フランス語で「Surrealisme(シュールレアリスム)」とあり、「非現実的・現実離れ」というような意味になるけれど、ようするに「ありえない~」という感じでしょうか。
なのに、童話は物語として成立して語り継がれているから、面白いものだなと。
目次は次のとおり。
<昔ばなしとその訓え>
- 姫君への手紙
- 眠れる森の美女
- 赤ずきんちゃん
- 青ひげ
- ねこ先生 または 長靴をはいたねこ
- 仙女
- サンドリヨン または 小さなガラスの上靴 ⇒「シンデレラ」っす
- 房毛のリゲ
- 親指小僧
<韻文物語>
- 序文
- グリゼリディス
- ろばの皮
- おろかな願い
「韻文物語」という形式が不思議だけど、より口語に近い感じでした。
ねこ先生 または 長靴をはいたねこ
ここで、あらすじの紹介はしませんが、簡単にねこ先生の正体は、兄たちが父(粉ひき)の遺産として価値あるものを受け継いだのに、三男坊は猫だった。しかし、この猫が「わらしべ長者」のわらしべのような猫で、三男坊にあれこれを指示を出し、それを実践してゆくと… とある意味、こちらもシンデレラボーイの結末に!というお話。
加えて、この童話集は最後いダメ押しの教訓が書かれてて、このダメ押しが当時(1697年出版)の風習っぽくていい。日本だと江戸時代徳川将軍4~5代目ころでしょうか。
教訓
父から子へと受けつがれる
莫大な遺産をもらいうけるのは
大きな利益には相違ありませんが、
若い人たちの場合は、ふつう、
知恵をめぐらすことや世の中の駆け引きを知っているほうが、
ゆずりうけた財産よりずっと値打があるものです。もう一つの教訓
粉ひきの息子がこんなにすばやく
王女の心を手に入れて、
うっとりした目で見つめられるようになったのは、
服や顔立ちや若さが、
愛情をよびおこすのに
ばかにはならないことを示しています。
辻昶氏による「解説」でも
(略)ペローの童話は一方で民話や伝説に特有の素朴さを残しているが、また他方では、ただ土くさいだけの伝承ものとちがって、フランス風の洗練された優雅さをもっている。それはペローが民間伝承の古い素材をもとにして、自分が生きたルイ十四世の時代の風物も描き出しているからである。
この童話集をひもとけば、宮廷やパリの町や田舎の風習や流行、王侯貴族やブルジョワや貧しい農民の生活といった、この当時のフランスのさまざまな面を知ることができる。
確かに、童話とは言え、大人の自分も楽しめた。
そして、橋本勝氏の挿絵もシュールなだけに、童話が持つシュールな部分でいい感じでシンクロしていたよ!
この1冊でした(Amazon)
新潮文庫は「眠れる森の美女」をタイトルに!