夜の酒場の雰囲気はそそられる
荻窪の路地で酒場の雰囲気。
ちまたの「酔いどれ紀行」本から想像できるような、いい感じの酒場紹介の内容ではない。
「飲まなないとやってられないぜ!」と言い、実際に飲んでいるのだろうけど、この著者の場合きっと飲まなくても飲んでるみたいな性格なのかな。自分も飲むと楽しくなるから好きだけど、決して量は飲めない。
本のタイトル | ブコウスキーの酔いどれ紀行 |
著者名 | チャールズ・ブコウスキー |
訳者名 | 中川五郎 |
出版社 | ちくま文庫 |
ついていると、人は飲みすぎる。ついていないと、人は…
「ついていないと、人は飲みすぎる」と帯も言っているように、読んでる自分も酔った気分になる。
アメリカ人作家ブコウスキーの著作がヒットし、人気作家となってフランス&ドイツを旅した紀行文である。ブコウスキーを慕っているらしいマイケル・モンフォートなる方の写真が添えられている。表紙の画像の元になった写真もあり、雰囲気がいい。
リンダ・リーなる彼女も同伴なのだが、スタンスは酔いどれでもブレることがない。
10 マンハイム行き列車
パリからドイツへ向かう列車の手配に右往左往する。
フランスとブコウスキーの相性は芳しくなかったようだけど、正面から否定することなく愚図る様子がおかしい。
窓口の者たちはみんな、まるでわたしたちが落ちぶれ果てた人間か気が触れた人間かのように、あるいは身も心も腐りきって悪臭をぷんぷん放っている人間かのように、これ以下はないというほどひどく相手を見下しきった口のきき方をした。わたしたちは汗まみれで、二日酔いだったので、もしかすると実際に悪臭を放っていたのかもしれない。このまま通りに寝そべって、何もかも投げ出してしまいたい気分に襲われた。
23 パリ行き列車
身も蓋もない言い方をしてしまうと、道中の様子は他の著作(小説)のままなのだが、それでも読むたびに「やっぱりブコウスキーなんだな」と変わらぬ調子が面白いと自分は思う。
(略)それよりも今夜のテレビは何か面白いものがあるかな? (略)うまくいかない二人のかすがいとなるのは、子供や教会よりも、むしろテレビだったりするのだ。
後半には「エピローグ」として散文調の詩が11編おさめられていた。
24からなる紀行文と詩、旅の様子をスナップした雰囲気のいい写真が多く、気軽に楽しい1冊だった。