サルスベリの美しさに気づいたのはわりと最近
大好きな杉浦日向子ワールドのタイトルが「百日紅」だから、なぜこのタイトル?と気になっていた。
百日(ひゃくにち)紅(くれないと)と書いて「サルスベリ」と読ませるのも乙だ。
この写真にちなんで、こちらを紹介したい。
「百日紅(上・下)」杉浦日向子(ちくま文庫)
ちなみに自分、千日紅というのも知っているよ。「センニチコウ」とみなは呼んでいた。
お江戸の世界俳句もいいな
なぜ、このタイトルなのだろう。気になっていたが、夢枕獏氏の解説に書かれていた。
散れば咲き 散れば咲きして 百日紅
とは、江戸の女流の女流歌人、加賀千代女の句です。(略)百日紅のしたたかさに、江戸の浮世絵師がだぶり、表題はこんなふうに決まりました。
その「したたかさ」については、まあ、本書を読んでご確認いただきたい。
ちなみに、wikipedia には
奇行の絵師とされる葛飾北斎を中心とした実在の人物たちを軸に、江戸の風俗や庶民の生活を描いた。恋愛、人情、ホラーといった様々な要素を取り扱う。
と紹介されている。
あながち間違ってはいないが、自分は結構短編小説的な読み方で楽しんでいる。
葛飾北斎とその娘(三女)を中心に、江戸 with 浮世絵の世界での人間模様を読ませてくれる。杉浦日向子女史のコマはどれでも、その一つだけで線画としても素晴らしいと思っている!
上巻
- 其の一 番町の生首(上)
- 其の一 番町の生首(下)
- 其の二 ほうき
- 其の三 恋
- 其の四 木瓜(ぼけ)
- 其の五 龍
- 其の六 豊国と北斎
- 其の七 鉄蔵
- 其の八 女弟子
- 其の九 鬼
- 其の十 人斬り
- 其の十一 四万六千日
- 其の十二 矢返し
- 其の十三 再会
- 其の十四 波の女
- 其の十五 春浅し
夢枕獏氏も絶賛しているが、「鬼」はいい。これが杉浦女史オリジナルのストーリーなら、小説家でも劇作家でも素晴らしい。個人的な趣味で言えば、「女弟子」みたいなエロいのも好きだ。
と夢枕氏は言っているが、自分なら… 吉右衛門と善次郎は当代勘九郎はハマっているとして、お栄の玉三郎はないな。七之助は少し違う気がして、中村壱太郎氏とかどうだろう?
下巻
- 其の十六 火焔
- 其の十七 女罰(おんなばち)
- 其の十八 酔(すい)
- 其の十九 色情
- 其の二十 離魂病
- 其の二十一 愛玩(あいがん)
- 其の二十二 綿虫(わたむし)
- 其の二十三 美女
- 其の二十四 因果娘
- 其の二十五 心中屋
- 其の二十六 仙女
- 其の二十七 稲妻(いなずま)
- 其の二十八 野分(のわき)
- 其の二十九 夜長(よなが)
- 其の三十 山童(やまわろ)
女好きの話の「女罰」はひねりがあって、「色情」は男の話とちょっと「うふっ」という気持ちになる。「離魂病」は怪談ちっくで、無条件に気になるが、せっかくならもうひと押しストーリを押して欲しかった。っと、一つずつ振り返ると、どれも余韻の残こる話だったりである。
癌のため早逝されているけど、つねづね残念である。もっといろいろな作品を見たいっす。微妙にさくらももこ女史と被ってしまい、ごめんなさい。