「ハーフ・プライバシー」池田満寿夫

表紙もご本人の作品で

お亡くなりになったのが1997年ということで、しっかり自分の意識に残っている。当時はあれ?若くして亡くなってしまったな、作家?芸術家?よくわからない方だけど多才な人っぽいな… と思った。

改めて著作に触れることできて少し嬉しい。

文庫概要

タイトルハーフ・プライバシー
著者池田満寿夫
出版社旺文社文庫
この写真にちなんで、こちらの文庫を紹介したい。

満寿夫氏の魅力が詰まっているとしか言えない、表紙もご本人の作品。

内容紹介

大きく三部構成で絵・写真・文集での構成になっている。

  • ハーフ・プライバシー
  • クオーター・プライバシー
  • シティ・アンド・シー

池田満寿夫氏の多忙ぶりがうかがえる反面、日本もバブルに向かって行け行けドンドンのちょっとした上昇基調を感じることができる1冊。どことなくバブル時代の香りが残る。

ハーフ・プライバシー

本人「あとがき」での説明によれば

「週刊文春」に一九七八年七月から十一月まで連載。

いきなりエゴン・シーレばりの女性の大胆で挑発的なポーズの水彩画で始まる。「ポルノ考」というタイトルのエッセイでは

見物物に徹していて、バレエをやっているような体の動かし方で、セックスもこうなればスポーツと大して変わらないものだと、むしろこちらをガッカリさせたくらいである。

とまで言い切るが、セックス絡みのポーズの水彩画が続くが、きっと描く方もそれなりにエネルギーを消費したのでは?と推測される。

クオーター・プライバシー

本人「あとがき」での説明によれば

「諸君」の表紙の一部と一頁エッセイ、一九七八年一月から一九七九年十二月まで連載。

とあり、水彩画はワンカット風で少し控えめになる。ここは割と文章に力点があるかなと。「ガン宣告」というエッセイでは

二週間後の精密検査でガンの疑いは無くなったが、何故担当医があんなに簡単にガンかもしれないと断定的に言ったのか、そして何故私自身動揺しなかったのか理解できない。多分キャンサーと英語で言われたので実感がわかなかったのかも知れない。

シティ・アンド・シー

本人「あとがき」での説明によれば

(「ローマ」「パリ」「エーゲ海」「サモア島」)は、雑誌に依頼されてそのつど書いた紀行文と、気ままに撮影した写真との合成である。

「私のローマ」

映画監督第二作目の「窓からローマが見える」の撮影のため、パリからローマに入ったのは七月一日だった。(略)ニューヨークを完全に引揚げてから、次はパリに拠点を持とうという考えからだった。奇妙な話だが、アメリカにいる間はパリは好きな場所ではなかった。(略)「エーゲ海に捧ぐ」の監督のため、ローマに来るまで十年以上もご無沙汰していた。

この章では、写真と文章で構成されているのだけど… 写真は面白いけど文章のネタが今ひとつ興味をそそられない。主に映画の話なのだが、その映画に全く興味をそそられない。しかし、最後の(厳密には内縁の)妻となる陽子夫人が登場してくる部分は面白い。「パリ・ワイン・麻雀」というタイトルのごとく、飲み食い遊びの話は面白い。

なかなか(やっぱり)器用な人だったんだなと思わせるが、映画だけはつまらなさそう。

この1冊でした(Amazon)

芥川賞作品「エーゲ海に捧ぐ」は何となく興味がそそられないけど、遭遇したら読んでみたい。