日課になりつつある、古書店巡りで見過ごせなかった1冊だった。著者、出版社、表紙の紙質、デザイン、全てが合わせって妙なオーラーが漂っているのに、コーヒー1杯のお値段とは。
本の概要
タイトル | 井上ひさしの読書眼鏡 |
著者 | 井上ひさし |
出版社 | 中央公論新社 |
小豆色のスピンも素敵だ。知らずに救済(購入)したけど、多田氏はシンプルな装丁を特徴とされる、割と有名な方のようだ。そんな1冊を見逃さなかった自分のセンスを自慢したい。
内容紹介
帯には次の通りある。
井上ひさしが
見出した、
面白い本、
恐ろしい本。
『読売新聞』連載、遺稿となった書評集
まさに帯の通りなのだが、紹介されている本は辞書をはじめとして、ちょっと手軽に読んでみようかな?という類のものではない。
ちなみに、初出紙誌
- 井上ひさしの読書眼鏡『読売新聞』
- 米原万里の全著作 米原万里展「ロシア語訳から作家へ」図録
- 藤沢さんの日の光 文春ムック『「蝉しぐれ」と藤沢周平の世界』
体感で読書眼鏡が9割を占めるような感じであろうか。米原万里女史のことは以前から気になっていたが、なんと、ひさし妻の実姉であるとは発見であった。
現実を正しく見るために
手軽に手にする類の本ではないけど、その紹介されている内容はなかなか発見がある。
正直、ここでの書評を読んで、「読んでみようかな?」という気持ちに多くの人はならないと思うけど、こういう本ってそう読むんだ!という参考になる。考える頭脳の訓練にもなる。
ところが、不幸なことに、考える人たちの表現はおしなべてむずかしい。(略)
もちろん、考える人たちの中には、さまざまな工夫と苦心を重ね長ら、送り手と受け手の距離を縮めようと腐心している人たちもいて、決して悲観することはないのです。(略)経済学者の金子勝さんと社会学者の大澤真幸さんの『見たくない思想的現実を見る』(岩波書店)がそうです。
新宿に生きた林芙美子
林芙美子作品好きの自分にとっては刺さる話題であるけど、新宿区下落合在住だった林芙美子と新宿という関わりは盲点だった。
川本三郎さんの新著、『林芙美子の昭和』(新書館)は、中味が良くて文章が平明、かつ深くもあって、心から堪能しました。
47歳という若さで生き急いだ芙美子女史だけど、長生きしたら新宿を舞台にしたコッテリした小説書いてくれたかな?
新興の盛り場ですから、たくさんの隙間があります。林芙美子はその隙間を巧みに潜り抜けながらなんとか食べて行く。
この1冊でした(Amazon)
あいにく文庫だけの掲載であるけど、やっぱりハードカバーの方が素敵。