久しぶりに(早く)関西や西日本に行きたいっす。
文庫概要
タイトル | わたしの大阪 |
著者 | 小松左京 |
出版社 | 中公文庫 |
内容紹介
長らく積んでいた作家、どこから手をつけるべきか思案していたが、たまたまご本人のアイデンティティに触れるような1冊に巡り会えたので、早速読んでみた。構成は以下の通り。
ラブ大阪に満ちたエッセイだったけど…
Ⅰ
- 古代のなにわ
- 大阪の「地盤沈下」とその闘い
- 日本埋立論
- 関西のライフスタイル
- 大阪の未来のために
- 大阪における文化開発の重要性
- コスモポリタン・シティ 大阪 ――古代、現代、そして未来へ
Ⅱ
- 山片蟠桃 ――「SFの先駆者」をにおわせる商人学者
- 上田秋成
Ⅲ
- 灘・再訪
- 洲本
- 大阪
- 続大阪
- 歌舞伎との出会い
- 食い気と歌舞伎
- 「一幕立ち見」のころ
大阪の「地盤沈下」とその闘い
1989年1月の文章、時代はまさに昭和から平成へと変わるときだなと。
オランダ人は、「ヨーロッパは神がつくった。しかしオランダの国の大部分はオランダ人がつくった」とほこらしげにいう。大阪人も同様にほこっていいかも知れない。――この先、大阪のウオーターフロントにはまだ思いもよらぬ自然災厄、たとえば地球的温暖化による、平均海水面の何メートルかの上昇といった事が起るかも知れないが、その時は、昭和の半世紀を通じて休む事なくつづけられた、この大規模な「半永久戦争」における各界先人のおどろくべき粘りと協力を、もう一度掘り起し、思い起せばいいのではないか。
来る大阪万博に興味は薄いけど、令和の現在、今後の大阪の発展にはすごく興味がある。それにしても、大阪はやはり豊臣家がつくったようなものかしら。関西は本当に東京と異なった地政学が働いていると思うと、興味が募る。
上田秋成
以下の”`彼”とは、上田秋成を指す。雨月物語の著者として知ってはいたけど、「大阪」を語るに当たって、これほど重要なパーソンだとは知らなかった。
形成期の大阪ブルジョア教養主義の中に人となった彼には、理財を尚ぶ商人の俗物性をはげしくののしりながらも、一点、都市町民的理性があって、武士的・地方土俗的ファナティシズムをまぬがれさせているところがあった。(略)――「狂気」を発するにいたる道は、実はもう一つある。「学芸」を通じて、現実から徐々に遮断され「学問」や「思想」や「イデオロギー」や「美」だけで、現実と関係のない完結した世界を構築して行くことである。
それにしても、もっとお気楽娯楽な大阪エッセイかと思ったら、ガチに学術論っぽい大阪エッセイだった。ますます、小松左京が気になってきた。