画像は、自分が気に入っているフレンチ定食屋のようなレストランの一品で、料理はフレンチなんだけど、店の雰囲気もお値段も気の利いた日本の定食が美味しい居酒屋みたいなお店。それだけに、お昼はかなり混む。
むかしのパリのレストランを振り返っている、こちらの1冊にちなんで選んだ1枚。
文庫概要
食への関心が薄れた時、作家の食べ物エッセイは食べる喜びを思い出させてくれる。
タイトル | 私の食べ歩き |
著者 | 獅子文六 |
出版社 | 中公文庫 |
内容紹介
自分は大食も間食しない代わりに結構規則正しく一定量を食する人間なので、食欲がないからといって食事を抜くこともない。
時にややもすると、その規則性に従って食べてしまう傾向があり、そういう食事はいつも以上に手を抜いた調理になっている…。手抜き調理がハマって「簡単なのに美味しい!」というのは2割くらいで、残り8割は生きるため(今の時代には大げさ)に食べる食材になり下がる。
食べる喜びが欠落する。
- わが食いしん坊
- 昨日の美味は今日の美味にあらず
- 一番食べたいもの
- 私の食べ歩き
- わが酒史
- 解説 山本益博
という構成になっている。
一番食べたいもの
ここでは
雑多に魚やおでん、きのこ料理、バナナ、汽車弁当、信州の洋食など食べ物に関する1~2ページの思い出話が26作品。次にお酒に関するものが12作品、パリ滞在での食(やレストラン)に関わる話が12作品、幼少期から慣れ親しんだ横浜での洋食や中華に関するものが6作品と続き、
「パリの日本料理」
パリ広しといえども、ライス・カレーとトンカツは、日本料理屋へ行かないと、食えない。(略)何も、パリまできて、ライス・カレーとトンカツを食うに及ばないと思うけれど、文部省留学生あたりは、本郷界隈の味覚が懐かしいと見えて、注文が多い。
「故郷横浜」
この爺サンも、太田の牛肉屋の主人と並んで、文化史的価値を有する人物に違いなく、洋食の開拓者の一人として、あるいは、日本的洋食の創始者として、後世に残るだろう。
明治から、大正~昭和のグルメ話は興味深い。しかも今回は、フランス滞在歴がある作家だけに、パリの話すらある。
私の食べ歩き
何かの取材企画モノだろうか、都内の飲食店での食レポのようなもので、「根岸の笹の雪」などは今も営業しているようだ。
- 鰻
- 角正の精進料理
- 豆腐とどじょう――根岸の笹の雪――
- 天プラ
- ドイツ料理
- シナ料理
解説 山本益博
「解説」はなんと山本益博氏、氏一押しのとんかつ屋が自分の家の近所にあり、自分も気に入っているだけに、氏が批評する食の話には耳を傾けてしまう。
昨日今日の話ではない。バブルの時代の話でもない。(略)
平成の今でもこの状況は全く変わってなく、いや、ごくごく当たり前の話になってしまっている。旬を失っては日本料理の魅力は半減してしまうのであり、こんな時代になってしまったと言っても、心しなければそのうち生命にかかわる問題にもつながって来るのではなかろうか。文六先生、面目躍如と行ったところである。
食べる楽しみって、やはり土地のものとか旬って重要だよねと自分も常々思っているよ。利便性とは引き換えにしたくないなと。