岩手県=宮沢賢治くらいのインパクトはあったのだけど、タイトルは知っていても、内容を知らないものが少なくない… というより自分は「注文の多い料理店」と「雨ニモ負ケズ」以外の内容はほとんど無知ではないか?
近所のささま書店改ワルツ書店で「銀河鉄道の夜」と「宮沢賢治詩集」を発掘したので、別途「風の又三郎」も調達して読んでみた。
本のタイトル | 「銀河鉄道の夜」 「宮沢賢治詩集」 「風の又三郎」 |
著者名 | 宮沢賢治 |
出版社 | 旺文社文庫 |
「銀河鉄道の夜」から
収録作品は以下のとおり
- どんぐりと山猫
- 注文の多い料理店
- 水仙月の四日
- 山男の四月
- かしわばやしの夜
- 月夜のでんしんばしら
- 鹿踊りのはじまり
- なめとこ山の熊
- セロ弾きのゴーシュ
- グスコーブドリの伝記
- 銀河鉄道の夜
銀河鉄道の夜
宮沢賢治の小説より、メーテルが登場するあちらインパクトが強かったけど、ジョバンニやカンパネルラが登場する作品だったのねとアラフィフになって再会できた喜びみたいな。
「(略)天上どこじゃない、どこでも勝手にあるける通行券です。こいつをお持ちになれぁ、なるほど、こんな不完全な幻想第四次の銀河鉄道なんか、どこまででも行けるはずでさあ、あなた方たいしたもんですね。」
少しメルヘンチックだけど、理系出身の自分としては時間軸も含めた四次元での話とか、興味がそそられる。
ここではもはや仏教的な意味での死の想念は超克され、純粋な死がこの上なくおぼろに、しかもはっきりと表現され、時間軸と空間軸、つまり生者をとらえる檻ろは異次元の世界が報告されている。
初めて知ったけど「なめとこ山の熊」もよかった。この作品はいい、是非感受性が育つ児童期に読んで大人になって再考したい(もはや今の自分には不可能)。
「宮沢賢治詩集」から
収録作品は以下のとおり。
- 春と修羅 第一集
- 春と修羅 第二集
- 春と修羅 第三集
- 春と修羅 第四集
- 疾中
- 手帳より
- 歌曲より
童話、詩、農業、音楽と彼のキーワードがどれなのか不明だったけど、限定する必要はないんだなと。要するに多才って。
有名な「雨にも負けず」は手帳に書きつけてあっただけなようで、「手帳より」の「十一月三日」がそれであった。ふむ、発見。こういうわかりやすい詩は好きで、教科書で出会って以来、よく暗唱していた。
春と修羅 第一集
「青森挽歌」
けれでもとし子の死んだことならば
いまわたくしがそれを夢でないと考へて
あたらしくぎくっとしなければならないほどの
あんまりひどいげんじつなのだ
感ずることのあまり新鮮にすぎるとき
それをがいねん化することは
きちがひにならないための
生物体の一つの自衛作用だけれども
自分は詩を読み慣れてないけど、妹の死(むごい現実)による気狂いにならないための自衛作用という解釈は納得できた。加えて、解説の説明文にも納得。
同時代の多くの詩人や作家たちが、人間中心的な文明観にまみれ、都会にいて逆に人間を見る視力を失っていったのに反し、賢治は人間と風や雲、その他の動物を同質と視る大乗的な信仰心を彼独自のやり方でいきいきと育てることができた。
「風の又三郎」より
収録作品は以下のとおり。
- 蜘蛛となめくじと狸
- よだかの星
- カイロ団長
- ガドルフの百合
- 虎十公園林
- 蛙のゴム靴
- 雪渡り
- やまなし
- オツベルと象
- 猫の事務所
- ポラーノの広場
- 風の又三郎
「よだかの星」「風の又三郎」もタイトルしか知らなかったな。この年齢?になっても大人の視点で読む童話も楽しいなと。
一方、宮沢賢治単語?ではないけど、自分が知っている単語をまとめてみた。なかなか独自色のある語感かなと。
- イーハトーブ(賢治の心に存在した理想郷)
- カムパネルラ(「銀河鉄道の夜」の登場人物)
- ポラン(ポラーノ広場の別称? 大泉学園にあった古本屋の名前ではなかった?)
- クラムボン(バンド名ではなく、「やまなし」に登場する謎の存在)
アートなクリエイティブ関連で命名するときに、宮沢賢治作品の童話の名詞を利用するってズルいかもだけど、素敵だなとここでも納得した。
童話や詩、農業やら工業やら、チェロ弾いたり、レコードや浮世絵集めたり、ドイツ語などの外国語もならい本当に多彩な方だったんだなと改めて実感。長生きされたら、岩手県はどうなったのか興味は尽きないな。
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