「蜘蛛の糸」の冒頭部分を彷彿させる
自分では非常に気に入ってる場所であり光景、蓮の花っていいよね。
本のタイトル | 蜘蛛の糸・杜子春 |
著者名 | 芥川龍之介 |
出版社 | 新潮文庫 |
冒頭部分はこんな感じです。あいにく金色の蕊はまだ現れてない時期ですが、蕾ちゃんのウブな頃合いがいいと思う。
(略)池の中に咲いている蓮の花は、みんな玉のようにまっ白で、そのまん中にある金色の蕊(ずい)からは、何とも云えない好い匂(におい)が、絶間なくあたりへ溢れております。
比較するのも変でおこがましいが、芥川龍之介と太宰治を比較した場合、自分は芥川の方に俄然興味も関心もあるし好きだ。それを他の人に納得できる理由で説明はできないけれど。という訳ではないが、芥川の作品を新潮文庫で順を追って読んでいる。
オチな結末を期待するのは無意味かなと
以前はポツポツ拾い読みをしていたけど、読んでみればわかると通り、晩年の作品は薄ら狂気を感じる。それだけに、もっと純粋の穏やかだったものから順を追って、それでいて専門家が適宜編集&解説されたものがいいかなと。ということで、新潮文庫で3番目のこちらを読んだ。
多くは読んだことがあるせいか、冒頭部分を読むと既読感がある。それでいて、結末は思い出せない。なぜならば、結末はわりとオチもないからかと。そもそも、作品にオチを求めるのは歪んだ読み方だと思いながら… そんな調子だから、同じ作品を何度でも読める。
ちなみに、3番目のラインナップはこちらだが、「蜜柑」だけは強く印象に残っている芥川作品のうちでも大好きなうちの1編かも。
- 蜘蛛の糸
- 犬と笛
- 蜜柑
- 魔術
- 杜子春
- アグニの神
- トロッコ
- 仙人
- 猿蟹合戦
- 白
「蜜柑」は女の子が蜜柑を持って汽車に乗っているだけの話、途中、窓を開けられたりここでの”私”は非常にイライラを募らせるのであるが、最後の1文に救われる。
私はこの時始めて、云いようのない疲労と倦怠とを、そうして又不可解な、下等な、退屈な人生を僅かに忘れる事が出来たのである。
人生なんて、ちょっとしたことに救いを感じられるのだなと。神経が繊細な人ならではの1品だなと。読めば読むほど短編作家だなと思う。ひょっとすると、向いている作品があれば、長編の翻訳とかなし得ることができたかな?