事件の結末は湖畔にいたために起こったことから
ギムレットの1枚をご紹介したかったが、自分にカクテル飲む(撮る)機会が訪れそうにもなかったので、晩秋の夕暮れの湖畔の1枚を。
この写真にちなんで、こちらを紹介したい。
「ロング・グッドバイ」
レイモンド・チャンドラー
村上春樹(訳)
(ハヤカワ文庫)
清水俊二による旧訳タイトル「長いお別れ」も悪くないけど、村上春樹の新訳「ロング・グッドバイ」そのままもスタイリッシュで時代を感じさせてくれる。
文庫本で600ページは読み応えがある
以前、初めて手にしたときは長編なのと、自分の気分が乗らず小説世界に入れずに挫折していた。ひょんなことで今回は前のめりの気分だったので、一気に読み切った。
(自分が言うのもおこがましいが)非常によく練られていると思った。
主人公の私立探偵のフィリップ・マーロウが、容疑者のテリー・レノックスへの印象を語る一説。これは小説全体を通して、マーロウのとる行動の説明(動機)みたいなものだなと。
酔っぱらって、ひどいなりをして、すきっ腹を抱え、打ちのめされて、それでもプライドを持っていたときの彼の方が、私は好きだった。でも本当にそうなのか?
一方、これはレノックスの言葉で、これが(いわゆる)有名な「ギムレットを飲むには少し早すぎるね」につながると思われるので、読み飛ばさずにおきたい。
「夕方、開店したばかりのバーが好きだ。店の中の空気もまだ涼しくきれいで、すべてが輝いている。(略)しんとしたバーで味わう最初の静かなカクテル――何ものにも代えがたい」
もちろん、ここで言うカクテルは、ギムレットだよね?
そして、折り返し地点300ページほどで早くも事件の結末を匂わせる…
「そんなことは誰にもわからん。彼女自身にもわかっていないかもな。ベイビーは疲れた。ベイビーは壊れた玩具で長く遊びすぎた。ベイビーはさよならを言いたがっている」
(ネタバレ)犯人はベイビーです。残りの300ページは何を語るのだろう?
そして、あの一文は最後の最後に出る。
「ギムレットを飲むには少し早すぎるね」
原文は「”I suppose it’s a bit too early for a gimlet,” he said.」
当初は、犯人が判明して小説は終わるのかな?と想像していたけど、もう一押しがあった。個人的には、この一押しがこの小説で描かれた犯罪の救い難さ?根深さ?を感じさせてくれたかな。
やっぱり、古典は読了感が重厚。
映画はこれ!
小説舞台を日本に置き換えたNHKのドラマがまた絶品だった。
マーロウ相当役の浅井忠信も、レノックス相当役の綾野剛も好み。
小雪と古田新太も役にハマっていたと思う。