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女性の髪にみせられ「亜麻色の髪の乙女」作曲
ちょっとボケておりますが…
黒髪の立場からして、金髪にときめく気持ち、なきにしもあらず。
本のタイトル | ドビュッシーとの散歩 |
著者名 | 青柳いづみこ |
出版社 | 中公文庫 |
その道のプロが語るその道の話は面白い
機会があっていづみこ女史のCDを紹介することになったので、気持ちがのめり込んで読んだ。
しかも、マイホームである杉並とも所縁の深い方だけに、地元と全く関係ない内容にも関わらず親近感まで増す。
音楽雑誌への連載に書き下ろしを加え、Ⅰ~Ⅳの各章10作品の40作品で構成されている。雑誌の連載がベースになっているので、気軽に心地よく読めて嬉しい。しかも、音楽がネタなので、音楽観賞しているような気持ちも味わえる。
8 パコダ
パコダとは寺院の塔のことだそうだ。
作曲家の頭ってどうなっているのか?と思えてくる。わりとこういう論理的な記述に惹かれる。
ドビュッシーは、短調のかわりに全音音階を使ったり、東洋ふうの五音音階を使ったり、四度を重ねたりして調性感がなるべくあいまいになるように工夫し、並列的でスタティックな音楽をつくろうとした。
こういう背景がわかってくると、自分でもドビュッシーを弾いてみたくなるけど、実はそれほど簡単ではない。
ドビュッシーの作品を私たち日本人が弾くと、どこかなつかしい感じがするのは、こんなところからきているのかもしれない。
14 グラドス・アド・パルナっスム
「子供の領分」の第1曲らしい。
素人のピアノ弾き(自分のこと)は黒鍵が出てくると身構えるが、かつて中村紘子女史も「フラットが沢山ついた曲が好き」みたいなことを述べていたなと。
「グラドス・アド・パルナッスム博士」も同じ系列に属する作品だろうが、実は、ショパン自身はチェルニーは嫌っていたが、クレメンティの練習曲は大いに活用していたのである。
ただし、ハ長調ではなく黒鍵の多い調子で書かれたものを。
素人はハ長調が好きというより、安心なんだな。
24 風変わりなラヴィーヌ将軍
そして、こういう一面を持つ大作曲家の作る音楽、結局のところわかりやすいのがよい。
ドビュッシーは、大衆演劇が大好きだった。(略)
「バンジョーに合わせたジーグの踊り、叫び声、刹那的な陽気さ、高い靴音(中略)。テーブルがひっくりかえり、鏡が粉々に飛び散り、女の子たちはわめく…… 大狂宴だ!」
「エレジー ――あとがきにかえて」より
料理人による食の話とか、音楽家による音楽の話とか、その道の専門家の素人への話は発見が多くて素晴らしい。
自分も何か、そんな語れる何かが欲しいなと。
それまでの、長調と短調だけの音楽ではなく、喜びの中の悲しみ、絶望の中の不思議な歓喜、意地悪な皮肉、焼けつくような欲望と、悦楽のあとのむなしさ。ドビュッシーは、人間のマイナスの感情までも音と響きに託そうとした。
ピアノを聴くことに劣らず弾くのも好きである。まだまだドビュッシーまで理解できずにいるが、とっかかりを与えてくれる嬉しい1冊だった。
この1冊でした
あるところで紹介する予定のCDはこちら。