井伏氏はこの巨木をどう思っていたか気になっている
何故こんな通りに巨木が… と巨木に興味を抱くきっかけになった1本。
巨木脇の道を曲がれば作家の井伏鱒二氏が暮らしたと思われる場所がある。氏はこの木を見て何か感じたか、何も感じなかったのか気になっている。
この写真にちなんで、こちらを紹介したい。
「井伏鱒二 サヨナラダケガ人生」
川島勝(文春文庫)
林芙美子が放った言葉を上手に活用
中国の詩「勧酒」の「人生足別離(「人生、別れが多い」みたいな?)」を訳したとのことだけど、ちょっとやさぐれて感もありかっこいい。
(wikipediaによれば)そもそもは、林芙美子女史が放った言葉らしく、そのシーンに居合わせた井伏氏は「そのせりふと云ひ挙動と云ひ、見てゐて照れくさくなつて来た。 何とも嫌だと思つた。」らしいが、そう思いつつ後に訳語で使うのはまた味がある。
正直、井伏世界観を自分はまだ腹落ちできないでいる。そして、気になってる。
同じ土地で生活しているし、「長寿は人生の勝利者」と勝手に偏見を抱く自分は、見習いたい気持ちもある。それだけに、様々なタイプの作品やエッセイなどを残している井伏氏は自分にとってまだ謎が多い。編集者として井伏氏の身近で長く付き合った著者のこの本を興味深く読んだ。
内容は…
井伏氏は人と付き合うことを楽しんでいる感じだった。これも人生を楽しく生きるコツかなと。そして、地元の知っている地名が多く出て来るのも妙に嬉しい。東信閣は今もある。
随時江戸表の集りがあって、会場は大てい新宿のくろがねか、足が弱られてからは荻窪の東信閣があてられた。
川端康成の作品も個人的には非常に気になってて、自分なりの解釈が出来つつあるだけに、全く未開の井伏氏との対象が参考になった。
川端さんの刀の切っ先は鋭いが、井伏さんはそんな鋭い切っ先を鈍刀のようにして使う。それはボクシングのボディ・ブロウのように、あとから利いてくるのであるがーー。
この本、ネットで調べてみるとヤフオクに出品(11,480円)されたいた。欲しい。
先年、松田正平さんの見事な山椒魚の絵と、ほかに蛙や水すましなど数点による画譜と、和綴本『山椒魚』をセットにした本を作り、やっと三十年来の思いを遂げることが出来た。(略)
白洲正子さんや洲之内徹さんが大へん贔屓にしていた画家としても知られていた。松田さんは井伏作品をよく読みこんでいて、特に『山椒魚』や『へんろう宿』については、特別の愛着を懐いているようであった。
洲之内徹氏の審美感に憧れているだけに、気になる。
井伏さんは庶民つまり生活者のなかに、ほんとうの「言葉」が隠されていることを知って、それを宝石のように磨きあげた作家のような気がする。
抽象的ではあるが、この総括の一文が気になる。やっぱりもっと井伏作品を読まないとダメだ。